このたびはweb作品展に来場してくださり、誠にありがとうございます。
また、障がいのある人の芸術作品展「みちあふれる表現」にご応募いただいた皆様、誠にありがとうございました。
公募展は今年で第11回目を迎えます。年々、出展数、出展者も増え、この公募展の目標である「作品の発表の場を提供する」ことが、広く認知されてきたと感じて、大変嬉しく思います。
応募作品は、さまざまな技法を使って表現されていて、どれも新鮮に見ることができました。
その中で特にARTにみちあふれた作品1点をHeARTful賞、12点をアトリエnon賞、20点を入選とさせていただきました。また惜しくも選にもれたものの作品の良さが伝わる7点を審査員特別賞に選出いたしました。また、昨年に引き続き2名の方に名誉賞を授与いたしました。
この芸術作品展は、山口県内で芸術活動をされている障がいのある方の「作品発表の場」を提供することを目的にしています。ご応募いただいたすべての作品をネット上で展示しております。受賞作品におきましては、10月12日(土)~11月9日(日)に、徳山駅前図書館で展示します。ゆっくりとご鑑賞いただき、それぞれの作品の素晴らしさを存分にご堪能いただければと思います。
今後も参加いただいた皆様との出会いを、大切にしていきたいと思っております。最後になりましたが、この作品展に向け作品作りに取り組んでくださった方、また作品作りを応援、支援してくださった方々に対しまして、心より感謝を申し上げます。
審査員
貞広 鶏
・株式会社メディカルアートプラス:取締役
・一般社団法人スウィッチャー:理事
・アトリエ鶏:主宰
書芸家(近代詩文作家)・水彩画家・教育家
アートプロデューサー・ディレクター
・ケイズ・プロモーション:代表
山口県周南市出身/下松市在住/大阪芸術大学 芸術学部卒(芸術学士)
広告会社(企画制作部)、外食会社(販売企画部)在籍後、東京から帰郷して35歳で独立、ケイズ・プロモーション(デザイン企画制作)を始動。
絵画・書芸をたしなむ傍ら、H6年に受賞したコスモス文学新人賞を機に文壇デビュー。
H10年からデザイン専門学校の教員として物づくり・人づくり・街づくりに尽力。
山口きらら博、周南市徳山動物園、大道理芝桜他デザインプロデュース多数。
同時にデジタル作品など新しい取組みもあって、審査は嬉しい悲鳴となりました。応募者全員の熱量を肌で感じた…暑い夏でした。
全体テーマ『みちあふれる表現』に沿って、それに相応しい作品選出が私たち審査員の前提条件ですが、それぞれアート表現の中にシッカリ魂がみちあふれて…ハッキリ景色がみちあふれて…どれも素晴らしい作品群でした。出品者の皆さん「VERY THANKS」です。
中野 良寿
山口大学教育学部美術教育教室、山口現代藝術研究所[YICA]
香川県出身/山口県在住/美術家
1993年東京藝術大学美術研究科壁画研究室修了。
1994年、スコットランドにあるR.シュタイナー関連のテンプル・ヒル・コミュニティーに滞在。
2001年からの山口大学教育学部美術教育教室での教育活動、山口現代藝術研究所[YICA]での活動、ソロ・アーティストとしての活動の他、コラボレーション・ユニット""ノーヴァヤ ・リューストラ""の活動など国内外で環境をテーマにした作品を発表(NEW TOWN ART TOWN(岡山)、釜山ビエンナーレ2004(韓国)、YCAM10周年記念国際展(2013)、山口盆地考2018..吹き来る風が…(山口)、かがわ山なみ芸術祭(2016)、アートエコーまんのう(2023)など展覧会多数。2013年より山口市内にあるオルタナティヴ・スペースN3ART Lab代表。
2019年より「文化芸術・障害者文化芸術作品等調査・発掘事業」に関わる。
壁画制作:認定こども園 野田学園幼稚園、レインボーゲート(下北沢)、Temple Hill Community 壁画、ハウステンボス壁画の間(ロブ・スホルテ氏によるハウステンボス壁画の間制作アシスタント)、山口大学医学部仮設壁ホスピタルアートプロデュースなど
見留 さやか
山口情報芸術センター[YCAM]キュレーター
東京都出身
十和田市現代美術館キュレーター(2016-2023)を経て、現職。
これまで担当した主な展覧会に「名和晃平 生成する表皮」(2022)、「百瀬文 口を寄せる」(2022-2023)、「劉建華 中空を注ぐ」(2023)などがある。
HeARTful賞
審査員コメント
動物たちが重なり合って、仲の良さを表現しているのと同時に…その微笑みからリラックスしている様子が伺えます。単色の使い方も上手で効果も絶大!「HerARTful賞」に相応しい、安心感のある作品です。受賞おめでとうございます。
山近健太さんの《リラックス》という作品。絶妙に構成された動物たちが味のある線描で描かれています。それぞれの動物の表情や姿勢が独特で力が抜けた感じがして、見る側の心も解き解してくれる秀逸な作品だと思います。背景にある謎の数字もクイズのような遊び心があり、ほっこりとした気持ちになりました。
《リラックス》では、描かれている猿やカバなどの動物が、鑑賞者を強い眼差しで見つめています。その視線によって、動物たちに自分自身が観察されている気分になり、私は作品から目が離せなくなりました。鑑賞者が、絵から見られる側に変わる感覚を体験できる作品です。
アトリエnon賞
審査員コメント
寺岡章さん「誇れる地球」
動物や植物や人、そして人が作り出す機械…地球に共存する様々なものを色鉛筆で極め細やかに表現しています。その発想力には目を見張るものがありますが、配置バランスも抜群で素晴らしい出来映えです。受賞おめでとうございます。
櫻井一城さん「usualwork」
無造作にプレスされた緑色のTシャツに連続した文字、あるいは文章が書かれています。書かれているとしましたが、これは絶妙に平面的に構成されていて、書かれた文字は描かれた文字と表現してもいいだろうと思います。不思議な完成度があり、爽やかな気持ちが伝わってくる作品です。
佐伯良樹さん「酉くん」
今にも画用紙から飛び出てきそうなインパクトのある作品です。配色バランスが抜群で、丁寧な筆運びも見心地の良さを演出しています。ずっと「にらめっこ」していても飽きない…独自性を持った逸品です。受賞おめでとうございます。
落合浩さん「帽子」
黒い紙に色鉛筆で描かれたモチーフは、タイトルの《帽子》以外にもひまわりや色とりどりの花壇を連想させます。モチーフが点在していることで、帽子をかぶった人物が花を眺めているようにも見えます。見る人によって、それぞれの物語を紡ぐことができる作品です。
古谷真奈美さん「かわいいあさがお」
線描で描いた後に切り絵の手法で裁断した色紙をモザイク状に貼り付けています。赤い花の左右には白い蝶が二匹描かれていてとてもピースフル。花の色は赤く、形はひまわりみたいですが、タイトルから朝顔の花を描いたもののよう。が、あまり細かく詮索することは無用。大胆な花そのものの描き方にこの絵の真価があるように思います。
櫻井星碧さん「へい、おまち!!」
ネタが分厚く、艶やかな寿司は、タイトル《へい、おまち!!》の通り、まさに今握られたばかりのようです。実物よりも「映えて」見える寿司は、現代のSNSで流通している写真とも繋がっているように感じられます。見ていると、お腹が鳴らずにはいられない作品です。
御手洗楓駕さん「ゴールはすぐそこ」
今年のパリ五輪を彷彿させる、思わず応援したくなる作品です。アンダーカラーを使用していますが、ゴールへ向かって一生懸命に頑張っている様子が単刀直入に伝わってきて、とても絵にチカラを感じます。受賞おめでとうございます。
鬼武宏明さん「家族旅行」
人物や風景の輪郭が複数の線で描かれたこの作品は、鮮明には思い出せない日常の一部のようにも見えます。その曖昧な線は、写真のブレのようにも見え、被写体が動いているように感じられます。この作品は、一部だけを切り取ることができない現実や、捉えきれない瞬間を想起させます。
青井一真さん「プレイステーション2ねじがぬけました」
私は、この作品の魅力が絵とタイトルの関係性にあると思いました。タイトルを読んでから作品を読み解くと、部屋の中に置かれているプレイステーション2のねじが外れたことを悲しんでいる人物が見えてきます。タイトルがなければ、その人物は笑顔のように見えるかもしれませんが、タイトルを知った後に人物を見ると、顔にある黒い線が涙のように見えてきます。青井さんは刺繍でも作品を制作しており、糸で布をまっすぐに縫っていく様子と、今回の作品の色の塗り方が重なるようにも見えてきます。
高村百華さん「楽しい象の親子」
象の親子をテーマに、塗り絵の手法で立体感を出した作品です。マス目に細かくバランス良く色を入れていって、主役となる親子象が迫力満点に表現されています。背景の入れ方も、主役を引き立てています。受賞おめでとうございます。
八木映子さん「やさい」
りんご、なし、ぶどう、マスカット、もも、みかん、さくらんぼ、さつまいも、じゃがいも、、とフルーツと野菜の記述が続いていつも間にか独特のリズムが生まれてくるような絵柄になっています。目で追っているだけでもなんか楽しいですよね。上下二枚の作品、基本的に同じような内容構成。絵描き歌の要素があるかも。
藤村義孝さん「アフリカのおんなのことネコたち」
完成度の高い独特のフォルム、色彩感覚も特徴があり、一見すると仏像なのかなと思いました。タイトルを聞いてよく見るとバンダナを巻いたアフリカの女性の横に可愛い猫が描かれていて、優しそうな作者の人柄が想像できる一枚でした。